結婚相談所で出会った“普通の人”が、最高のパートナーだった話

女子部屋:結婚婚活悩み相談

結婚相談所体験談、30代女性

理想のパートナー像という幻想

「年収は最低でも600万円、身長は175cm以上、次男希望。家事もある程度できて、優しくて、できれば見た目も清潔感あって――」

あの頃の私は、ノートの端に“理想のパートナー条件”を箇条書きしていた。
条件が多ければ多いほど、自分の人生がよりよくなるような気がしていた。
だって、結婚って人生の大きな選択。絶対に失敗したくなかった。
だからこそ、私は「譲れない条件」にこだわり続けていた。

結婚相談所に登録したのは、30歳を過ぎた頃。
友達が次々と結婚していく中で、焦りと不安に押されるように始めた婚活だった。
「自分に合った人をプロが探してくれる」――そんな期待を胸に、最初は前向きだった。

でも、現実は思った以上にシビアだった。

担当カウンセラーさんが紹介してくれるのは、“条件にピッタリ合う人”。
確かにプロフィール上は完璧な人ばかりだった。
年収も学歴も申し分ないし、話してみても礼儀正しくて嫌なところは何もない。
でも、どうしてか、心がまったく動かなかった。

「いい人なんだけど……なんか違う」

何度そう呟いたかわからない。
会っても会っても“違和感”ばかりが残った。
「理想は満たしているのに、なぜ好きになれないんだろう」
帰り道で何度も考えた。でも答えは出ないまま。

そんなある日、カウンセラーさんが私に言った。

「理想の条件って、“安心”を得るためのフィルターなんです。
でも、心を動かすのは、案外“人間らしさ”だったりするんですよ」

その言葉に、私はギクッとした。
まるで見透かされたような気がしたから。
確かに私は、“安心できる材料”ばかりを求めていたのかもしれない。
過去の恋愛で傷ついた分、もう失敗したくなくて、条件で守りを固めていたのだ。

だけどそのときは、まだその言葉の本当の意味が分かっていなかった。

その数日後、私はプロフィール欄を開いて、一人の男性を見つけた。
特別条件がいいわけでもなく、なんなら今までの“理想”には当てはまらない人だった。
でも、どこか気になる――そんな直感があった。

その人が、後に私の“最高のパートナー”になるなんて、あの時は思いもしなかった。

条件には当てはまらない、“普通”すぎる人との出会い

「この人……なんで気になったんやろう」

彼のプロフィールを見たとき、正直、条件でいえば“何も引っかからなかった”。
年収は平均的。身長も私が理想としていた175cmには届いていないし、趣味も特別おしゃれな感じでもない。
写真も、正直いってイケメンではなかった。
でも、なぜか「会ってみたい」と思った。

直感だった。理屈じゃない、でも無視できない感覚。

お見合い当日。待ち合わせ場所のカフェに、彼は5分前に現れた。
グレーのシャツに黒のスラックス。見た目はまさに“普通”。
でも、その姿勢には、どこか落ち着いた印象があった。
「はじめまして」と礼儀正しいお辞儀、声は穏やかだった。

会話が始まってすぐ、「あ、この人はちゃんと“人”と向き合う人なんだ」と感じた。
仕事の話をするときも、相手を褒めたり、感謝の言葉を自然に口にする。
私が話しているときは、うんうんと目を見て聞いてくれて、
必要以上に突っ込んでこない。でも、ちゃんと興味を持ってくれているのが分かった。

特別おもしろい話があったわけでも、ドキドキするような瞬間があったわけでもない。
でも、不思議と「気を遣わないでいられる人だな」と思った。

その日、帰り際に彼が一言。

「また、よかったらお会いできたらうれしいです」

なんてことない一言だったけど、私の中ではじんわりと嬉しさが広がった。
無理に場を盛り上げようともしない。自分を大きく見せようともしない。
“好かれよう”と頑張っている感じがないのに、気づけば私は彼との時間を心地よく感じていた。

帰り道、私はスマホを開いて、自分が書いた“理想の条件リスト”を見返した。
……この人は、どれにも当てはまっていない。
でも、リストには書ききれなかった、“安心感”や“あたたかさ”が、彼にはあった。

もしかすると、“理想”に縛られていた私は、大事なものを見落としていたのかもしれない。

“普通”の中にあった、驚くほど深い優しさ

2回目のデートは、彼の提案で、少し落ち着いた雰囲気の和食屋さんだった。
「気軽なお店がいいかなと思って」と言ってくれた通り、肩肘張らない空間で、会話も自然とほどけていった。

前回と同じように、特別なトピックがあるわけじゃない。
でも、一つひとつの会話に、私は静かに惹かれていった。

たとえば、実家の話になったとき。
「母がちょっと体弱くてね、週末はたまに様子見に帰ってるんですよ」
そう言って笑う彼の顔が、すごく穏やかだった。
“優しい人”って、声高にアピールしなくても、ふとした言葉の中にじんわりと滲むものなんだと知った。

食事中、お皿が運ばれてきたときもさりげなく私の方に向けてくれたり、
お茶のおかわりが来たときも「飲む? 冷める前にどうぞ」って自然に差し出してくれる。
どれも、いちいち「ありがとう」って言うほどのことじゃないような、
小さな動作。でも、それが積み重なると、不思議と心に残る。

私、いま、すごく“大事にされてる”って感じる。

帰り道、駅まで歩く途中で、彼が何気なく言った。

「前に会ったとき、ちょっと疲れてたみたいだったから、今日はのんびりできる場所にしようと思って」

……えっ。そんなこと、気づいてくれてたんだ。
私自身、あの日ちょっと仕事が忙しくて余裕なかったけど、それを言葉にした覚えはない。
「見てないようで、ちゃんと見てくれてる」
そのさりげなさに、私は胸が熱くなった。

彼のことを「普通の人」だと思っていた。
でも、たった2回会っただけで、私の中の「人を見る目」が静かに変わっていった。

華やかさはないかもしれない。
でもその分、彼の人柄には“誠実さ”や“静かな思いやり”がちゃんと詰まっていた。

たぶん、これが“相性”ってことなんだろう。
条件じゃ測れない、目には見えないけど、確かに伝わってくるもの。

私は、心の奥でひとつの結論を出しかけていた。

「この人と一緒にいると、なんだか自分まで優しくなれる気がする」

それって、すごく大事なことじゃない?

“好き”の感情じゃなく、“信頼”から始まった関係

何度目かのデートの帰り道。
彼と別れたあと、私はふと立ち止まって空を見上げた。
夜風が心地よくて、心が静かに整っているのを感じた。

それは、誰かに強くときめいたときの高揚感とは、まったく違っていた。
ジェットコースターのような恋じゃない。
でも、静かに自分の輪郭が整っていくような、不思議な安心感。

そのとき私は気づいた。

「“好き”って気持ちより先に、“信頼”が生まれてるんやな」って。

これまでの恋愛は、いつも“好き”から始まっていた。
ドキドキする、会いたくなる、触れたくなる。
でもそのぶん、不安も大きかった。
LINEの返事が遅いだけで落ち込んだり、
会話の温度差で一喜一憂したり。
「好きなのに、しんどい」そんな恋ばかりだった。

でも、彼との関係には“しんどさ”がない。
いつLINEしても、自然体で返してくれる。
沈黙が続いても、気まずくならない。
むしろ、その静けさに“安心”すら感じるようになっていた。

あるとき、私が仕事で少し落ち込んでいたときのこと。
「どうした?」と聞かれても、私はつい「ううん、大丈夫」とごまかしてしまった。
でも、彼はそれ以上追及せず、ただコンビニで買ってきたプリンを差し出してくれた。

「とりあえず甘いもん食べよ。落ち着いたらでええから、話してな」

その言葉に、涙が出そうになった。
なにかしてくれたわけでも、特別な言葉をかけてくれたわけでもない。
でも、そこに“寄り添おう”という気持ちが確かにあった。

――恋愛って、“ドキドキするかどうか”じゃないのかもしれない。
――むしろ、“しんどくならない相手”って、実はすごく貴重なんじゃないか。

そんなふうに思い始めていた。

もしかしたら、“恋愛感情”にとらわれすぎていたのは、私のほうだったのかもしれない。
彼はずっと、変わらない距離感と誠実さで私に接してくれていたのに。

「この人なら、何があってもちゃんと話せる」
「嫌なことがあっても、支え合える気がする」

恋のときめきは、時間と共に薄れることもある。
でも、信頼は、時間をかけて育っていくものだ。

私はようやく、“安心できる関係”の価値に気づき始めていた。

特別じゃない日々を、特別に変えてくれた人

「じゃあ、来週はうちでカレーでも作るよ」

そんな、なんてことのない一言が、私にとってはすごく嬉しかった。
彼と付き合うことになってから、時間の流れがゆっくりと変わっていった。
劇的な展開はない。記念日やサプライズも、特にない。
でも、不思議と“満たされている”感覚があった。

最初のうちは、物足りなさも少しだけ感じた。
「こんな感じでいいのかな」
ときめきや刺激に慣れていた私は、正直、平坦すぎるこの関係に戸惑っていたのかもしれない。

でも、ある日、彼の家で一緒にご飯を作ったときのこと。
買ってきたじゃがいもが緑がかってて、「あっ、これ芽出てるわ」って二人で笑ったり、
私が味付けに迷ってると、「ちょっと味見してみよか」と言ってスプーンを差し出してくれたり――

ただのカレー作りなのに、その時間がすごくあたたかかった。
まるで長年連れ添った夫婦みたいに、息が合っていた。

帰り際、靴を履きながら私が「楽しかった」と言うと、彼が少し照れたように笑って、
「一緒にご飯作れる人って、なんかええな」ってぽつりとつぶやいた。

――ああ、この人と暮らしていけたら、毎日が穏やかで、幸せなんだろうな。

そのとき初めて、“未来の生活”がリアルにイメージできた。
恋に落ちる瞬間じゃなくて、
「この人となら、どんな日でも乗り越えていける」って思えたことが、
何よりも大きな“決め手”になった気がする。

SNSで見るようなキラキラしたデートや、映画みたいなセリフはない。
でも、私が求めていたのは、本当はそういう「見た目の幸せ」じゃなかった。
朝、眠そうに「おはよう」と言い合えること。
疲れた日、何も言わずそばにいてくれること。
風邪をひいたら、おかゆを作ってくれるような優しさ。

“普通”だと思っていた彼との毎日は、
気づけば、私の人生の中でいちばん“特別”な時間になっていた。

あの日の“理想リスト”を、そっと捨てた

ある日、引き出しを整理していたとき、懐かしいノートが出てきた。
結婚相談所に登録したばかりの頃、真剣な顔で書き出した「理想の条件リスト」。

──年収〇〇万円以上
──身長175cm以上
──次男
──穏やかで、家事ができて、聞き上手で、価値観が合って……

そこには、私の“完璧なパートナー像”が、細かく記されていた。

思わず笑ってしまった。
今、隣にいる彼は、そのどれにも当てはまっていない。
年収は高くないし、身長も170cmそこそこ。
長男で、料理もそんなに得意じゃない。

でも、彼は、誰よりも私を笑顔にしてくれる。
何でもない日常を、大切にしてくれる。
私が泣いた日は、黙って手を握ってくれる。

「条件が合うこと」と「一緒にいて幸せになれること」は、まったくの別物だった。
それに気づけたのは、彼と出会えたからだ。

昔の私は、「理想の条件」を持っていれば、幸せになれると思っていた。
条件が揃っていれば、自分も安心できると思っていた。

でも今は、こう思う。

“条件”は、誰かを選ぶためのものじゃなく、
「本当は何を大切にしたいか」を見つめ直すための材料だったんだと。

私は、そのノートを閉じて、そっと処分した。
もう必要ない。
目の前の彼との日々が、何よりも大切だから。

結婚って、確かに現実的な選択の連続かもしれない。
でも、最終的に人は、“一緒にいて安心できる相手”を求めているのだと思う。

だから、こう伝えたい。

「理想にとらわれて、目の前の“人”を見落とさないで」と。
本当に大切なものは、案外“普通”の顔をして、目の前に現れるのかもしれないから。

──“普通の人”だった彼は、今、私にとって世界で一番“特別な人”になった。


✿ おわりに

たしかに、理想は大事。
でも、人生をともに歩むパートナーは「条件」じゃなく、「感覚」で選んでもいい。
焦らず、自分の心の声に耳を澄ませてみてくださいね。
あなたにとっての“特別な人”も、きっとどこかで出会いを待っています。

Luke

大阪生まれ大阪育ちの40代イケオジの婚活アドバイザーことLuke(ルーク)です。マッチングアプリや婚活に悩む女性の心に寄り添い、ちょっと辛口で本音のアドバイス、婚活処方箋を届けていくで!

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